創業期に機能していた意思決定のやり方が、ある時点から機能しなくなります。多くの場合、それは従業員が30名を超えたあたりです。会議が増え、決定が遅くなり、誰が何を決めていいかわからなくなる。この文章は、その状態を整理するための考え方を書いています。
なぜ30名で変わるのか ¶
10名以下の組織では、全員が同じ情報を持っていることが多い。創業者の意図が直接伝わり、判断の根拠を共有しやすい。ところが30名を超えると、情報の非対称性が生まれます。現場が知っていることを経営者が知らない、経営者が考えていることを現場が知らない。この状態で「全員で話して決める」を続けると、会議が増えるだけで決定が出なくなります。
承認フローの棚卸しから始める ¶
まず、今どんな決定がどのルートで承認されているかをリストアップします。書き出してみると、同じ種類の決定が複数のルートで処理されていることが多い。採用の最終承認が、案件によって代表に行ったり、部門長で止まったりしている、という状態です。これを統一するだけで、処理速度が上がることがあります。
「自分が決めていいこと」を明文化する ¶
各チームリーダーに、「自分が単独で決めていいと思っていること」と「上に確認が必要だと思っていること」を書き出してもらいます。このリストを経営者のリストと並べると、認識のズレが見えます。ズレている部分が、意思決定の詰まりの原因になっていることが多い。ズレを解消するには、権限の範囲を文書で明示する必要があります。
会議体の整理 ¶
意思決定フローを整理すると、不要な会議が見えてきます。「情報共有のための会議」と「決定のための会議」が混在していることが多い。情報共有は非同期で行い、会議は決定のためだけに使う、という原則を設けるだけで、会議の数が減ることがあります。ただし、この変更は現場の習慣を変えることなので、定着には時間がかかります。
設計より定着が難しい ¶
承認フローを文書化することは、比較的短期間でできます。難しいのは、それを現場に定着させることです。新しいフローが機能しているかを確認するために、設計後も数週間は実際の会議に同席することを勧めています。文書があっても、以前のやり方に戻ってしまうことは珍しくありません。
意思決定の詰まりは、組織の成長に伴って自然に起きることです。問題は、それに気づくのが遅れることです。会議が増えてきたと感じたら、承認フローの棚卸しを試してみてください。